いいちことは
『まさかっ、あれは…』
『どうした雷電⁈ 顔色が悪いぞ』
いいちこ(1対15)
中国殷の時代、城塞都市汪韋駄(オオイタ)では長江の氾濫よる肥沃な土壌の恩恵で大麦栽培が盛んであったという。
食料としての大麦は供給が需要を超えて過剰に余る程であった。
ある日、下町の商家である南浦嶺緒(ナポレオ)は売れ残りの腐敗間近の小麦を自身の食事の為に大鍋で煮焼いていたが迂闊にも寝入ってしまった、沸騰による蒸気が屋内中に立ち込め南浦嶺緒は暑さで目が覚め大鍋の火を消した。
充満した蒸気は天井で雫となり南浦嶺緒の手の甲に落ちる、彼はその水滴を酎(ちゅう)と舐めてみると無色無臭ながらも甘美で舌を刺激する不思議な液体であった。
世界最古の蒸留酒である焼酎(しょうちゅう)の発見である。
余剰在庫の大麦を南浦嶺緒が生産化したこの酒は金1經(約1.169グラム)に対し15氣(約10.8リットル)で交換され巷ではこの取り引きをいいちこ(1対15)と呼ぶようになった。
いいちこ取引による南浦嶺緒の利益は莫大で最高位の官職である皇帝を賄賂により得る程であった。
日本でも製造される麦焼酎いいちこはこの事に由来する説が有力である。
尚、この酒が1升辺り1500円程で流通しているのもいいちこ(1対15)レートによるものである事は余り知られていない。
(民明書房刊『酔いのメカニズム 上巻〜酒の起源〜』
より抜粋)